今回は、世界的に有名な、ジーン・ウェブスター著「あしながおじさん」です。


この作品は、30分ほどで読める短編の物語なので、読書が苦手という人が、読書感想文を書くための本としても、おすすめの一冊です。

「あしながおじさん」は、少女が恋を実らせる素朴なストーリーですが、問題点も指摘されます。

本書に登場する「あしながおじさん」は、正体を隠して、経済的援助をし、別人として少女に近づいて求愛をする人という点に「怖い」という声があるのです。

その部分だけ聞くと、なんだか・・・

「援〇交際」成功術
 
 Σ(゚Д゚;)エッ!

・・のような内容のようにも思えなくもないですよね。(え?違う?)

そこで、今回は「著者の紹介」や「あらすじの紹介」のほか、なぜ、あしながおじさんは正体を隠したのかについても解説していきます。

「あしながおじさん」あらすじ&ポイント【ネタバレ動画】

以下の動画は「ネタバレ」ですので、結末などを知りたくない方はご注意ください。

動画が見れる状態で 同時に内容を活字で確認できるように「スクロールできるテキスト原稿」を動画の下に掲載しています。 👍goo!


「あしながおじさん」の作者は?

「あしながおじさん」を書いたのは、ジーン・ウェブスターという女性作家さん。39歳で産後の熱により亡くなられました。1912年という大昔に出版された本なのに、現代でも違和感なく読める「おしゃれな作品」と言えます。

作中に出てくる挿絵も、全て作者の手書きであるという点もユニークですね。挿絵は決して上手ではないけど、すごくで精密で物語をイメージしやすくて素敵です。

「あしながおじさん」のあらすじ

主人公のジュディは孤児院で育ちました。ジュディの文学の才能を評価した、一人の裕福な資産家の援助によって、ジュリーは大学に行くことができます。孤児院を出て、初めて見る開放的な大学生活を謳歌するジュディ。

学費を援助してくれた謎の資産家は、孤児院でチラリと人影を見ただけで、名前も顔も知りません。チラッと見えた影の足が長かったことから「あしながおじさん」と呼び、大学から何度も何度も感謝の手紙を書き送ります。

同級生には、心優しい子もいますが、お金持ちを鼻にかけたジュリアという高飛車な女の子もいました。しかし、ジュリアの叔父のジャービスは、たびたび学校や農園に訪ねてきてくれ、ジュディに親切にしてくれる好青年でした。

ある時ジュディは、ジャービスから真剣なプロポーズをされますが、孤児院出身であることを恥じて断ってしまいます。そして泣きながら胸の内を、あしながおじさんに手紙で書いて知らせるのでした。

あしながおじさんの結末

小説はすべて、ジュディから、あしながおじさんへの手紙スタイルで書かれており、30分ほどで読める短編です。

ジャービスからの求婚を断ったジュディは、ついに、あしながおじさんから「会おう」と言われ、会いに行きます。するとそこにはジャービスがいて、ジュディはあしながおじさんの正体がジャービスであることを知りました。

ジュディからあしながおじさんへの最後の手紙は、人生初のラブレターとなりました。

なぜ、あしながおじさんは正体を隠したの?

あしながおじさんは、確かにちょっと怖いと言えなくもないと思いました。正体を隠して経済的援助をするまではいいけど、別人として接近して、プロポーズをするのは、最初から下心があったのでは?と思えなくもありません。

しかし、じっくりと読み込んで行くと、あしながおじさんに下心がないと分かります。まず、あしながおじさんことジャービスは、孤児院の優秀な子供に教育のチャンスを与えました。

この時点では下心ではなく、裕福な資産家の義務としてビジネスライクに行ったという感じでした。

その後、ジュディからの熱心な手紙によって、自分が経済的支援をしている少女が、姪っ子の友人と知ります。そして興味本位で会ってみたら、ジュリーが魅力的な女性だったのです。

しかし、ジュディの手紙では繰り返し「孤児院出身であることを人に知られたくない」と書かれていたため、打ち明けることができませんでした。

何度もジュディと会い、同時に、あしながおじさんとして、ジュリーの手紙を受け取ってジュリーの心の本質を知ることに惹かれてゆき、ついに求婚したのです。

しかし、ジュディにフラれて失意のどん底にいました。そこへジュディから、あしながおじさん宛の手紙を受け取り、そこには孤児院出身を知られたくないから、ジャービスからの求婚を断ったとあり、初めて、あしながおじさんとしてジュリーに会うことにしたのです。

まとめると、ジャービスが正体を伏せていたのは、ジュディの手紙で、孤児院出身を誰にも知られたくないと言っていたからです。ジュディの気持ちを思いやったから始まった秘密だったんですね。

とはいえ、恋する女性の胸の内を別人として、手紙で受け取り続けるのは、恋愛においてすると言えるし、相手の本心を握って優位に立ち続けたかったのかとも取れます。

面白がっていたとかではないものの、ちょっと怖いですね。確かに・・・。この場合はジュディの方もジャービスに恋をしていたので、話は美しくまとまり結果オーライでよかったです。

「あしながおじさん」の見どころ

「あしながおじさん」の主人公ジュディは、本が大好きで、有名な「ジェーン・エア」や「宝島」や、シェイクスピアについても触れています。20世紀初めにも、現代と同じ書物が、既に人気で読まれていたのだと身近に感じることができますね。

特に「嵐が丘」の作者の姉の書いた「ジェーン・エア」は叔母の虐待に行って孤児院に引き取られたジェーンが勤勉な努力を積み上げて、ひっそりと生きて行き、幸せを見出す話なので「あしながおじさん」のジュディと通じるものがありました。

「あしながおじさん」は、短い小説で固い文学と違ってすらすら読めます。どうしても活字以外で読みたいという方は、日本の「キャンディ・キャンディ」という漫画が、内容がそっくりなのでおすすめです。

私の持論ですが、お金で人は幸せになれません。けど、お金がないことによる不幸はお金によって回避できます。

持ちすぎている人が、持たざる者に経済的援助をするのは、確実に世の中の不幸を取り除くことにつながるため、こうした人気小説がきっかけとなり、経済的に苦しい世帯の子どもたちが、教育の機会を持てるとすると、素晴らしいことです。
 
※子とも達を援助するための「あしなが学生募金」という募金活動を街でみかけますが、この「あしながおじさん」の物語から、ネーミングを考えたものですね。

「あしながおじさん」さまざまな書籍